ハチドリのひとしずく#7_「自分から自分らしく自分の言葉で語る」木村泰子さんとの特別授業
こんにちは。
関西創価中学校教頭の上原桂です。
今、とても幸せな気持ちでこのnoteを書いています。
5月17日に、大空小学校の木村泰子校長を迎えて、全校生徒で特別授業を行いました。今、振り返っても、未来への励ましに満ちた、奇跡のような授業だったと感じています。
◆自分から自分らしく自分の言葉で!
事前の打ち合わせで、「授業のテーマは当日発表するから」と言われ、ワクワクしながら迎えた当日。泰子さんが講堂に入ると、映画「みんなの学校」を観て、すっかり泰子さんを身近に感じている生徒たちが「あっ、木村先生や!」「握手してください!」「せいちゃん、元気ですか?」などと次々に声をかけにいっていました。
そして、泰子さんの「自分から自分らしく自分の言葉で語る」「正解のない問いを問い続ける」を大切にしようという呼びかけで始まったこの日の特別授業。「もう先生ちゃうから泰子さんと呼んで」という言葉で、生徒たちも「泰子さん!」と気軽に呼びかけながら、授業は進んでいきました。
泰子さんの問いかけに、どんどん立ち上がって、自分から自分の言葉で語る生徒たち。600人近い全校生徒の前で、発言するのはとても勇気がいることだと思うのですが、生徒たちの発言はとぎれることなく続きました。
ともすると、ふざけているように見えてしまうような発言や、まとまりのない質問も、聞いている生徒たちがその場で「あの子がこの場で発言できてるのすごい!」と泰子さんに伝えたそうです。「なんであの子が発言できてることがすごいの?」と聞いた泰子さんに、「いつも、やんちゃやから!」と答えたとのこと。そんな生徒たちに泰子さんは「あの子が安心して話せる空気はみんながつくってるんやで」と伝えてくださり、「場の空気は自分たちでつくる」ということを肌で感じた授業になりました。
授業が終わったあと「『時間だから』と発言をとめることはできたけれど、準備してきたように進まないのが授業の醍醐味。ほんとうに楽しかった!今でも心が震えてるわ」と言われていた泰子さん。生徒たちはきっと、どんな言葉、どんな思いも受け止めてくれる、という安心感を泰子さんの言葉や振舞いから感じていたのだと思います。
◆「どうしても受け入れられない人を、どう受け止めていけばよいですか?」
これは、生徒からでた質問の一つです。この質問に対して泰子さんは、一つのエピソードを紹介。ある日、一人の子が泰子さんのところに走ってやってきて「校長先生!嫌いな人いてませんか?」と聞いたそうです。泰子さんが「嫌いな人、いてるよ」と答えると「そうやんな!いてるやんな!」と。そして、「どうしてそんなことを聞くの?」と尋ねると「〇〇先生に、友達を嫌いになってはいけないと言われて、納得がでけへんから校長先生に聞きに来た」と答えたそうです。このときのやりとりを通して、次のように話されました。
世の中、きれいごとで生きてたらあかんと思う。「だれでも好きにならないといけない」とか「みんな仲良くしましょう」とか、それができたらいいよ。でもそれは結果。違う人間が集まってるんだから、そんなのできないのが当たり前。心の中で思ってること、これは『内心の自由』と言って、みんなに保証されている。でも、相手に「あんたのこと嫌いや!」と言うのは、心の中の声ではなく行動。わたしは目の前の人を悲しませないような行動をとる。内心をかえるのは難しい。だから内心を無理に変える必要はないけど、行動で相手を悲しませる必要はない。行動はアップデートできるし、学校はそれを学んでいく場だと思う、と。
◆「木村先生だからできた」で終わらせないために
この日の泰子さんと生徒たちのやりとりを見ながら、多くのことを学び、涙が出そうなほど心をゆさぶられました。それは泰子さんの問いかけに、一生懸命に自分の言葉で語ろうとする生徒の姿だけでなく、発言のたびに自然とおこる拍手や、たどたどしい発言であっても、言葉を待ち、耳を傾ける子どもたちの姿がそこにあったからです。
終わったあと、泰子さんにその気持ちを伝えると「この授業でのすばらしい子どもたちの姿を見て、木村やからできたんや、とか言う教員がいたらそれはとっても残念なこと。こんなにすてきな生徒たちを育てたのは間違いなく関西創価の先生たちの日頃のかかわりやから自信をもったらいい。もし教員が今日の授業を通して考えることがあるとしたら、『どうして子どもたちがこんな風に安心して発言できたのか』『どうして子どもたちがこんな風に友達の発言にじっと耳を傾けられたのか』ということ。そのことについて先生たちで対話したらいいと思うよ」と。
以前のわたしなら、「木村先生だからできた」と考えてしまって、そこで終わっていたかもしれません。ですが、それを言ってしまうと教員としても大人としても、進歩も成長もないと気づいた今は、こんな風に子どもたちが安心して話せたことについて、教員で対話を重ねながら、「特別」授業ではなく、「日常的」にこんな安心感の中で対話ができる学校にしたいと考えています。
◆「もっと泰子さんと話したい!」
この日の放課後、「泰子さんともっと話したい人がいたらおいで」と呼びかけたところ「泰子さんともっと話したい!」「アドバイスが欲しい!」と30人ほどの生徒が集まり、友達関係の悩みや、家族のこと、小学校時代に辛かったこと、クラスの友達のために何ができるかなど、泰子さんと生徒たちとの対話が1時間ほど続きました。ここでも、赤裸々に自分の思いをさらけ出す生徒たちと、それを真正面から受け止めて対話をする泰子さんからたくさんのことを学びました。
帰り際、3年生の「『みんなの学校』を作るんで、ぼくらが卒業するまでに、絶対また来てください!」との言葉に、「また来るわ!」と言ってくださった泰子さん。生徒たちの熱い思いに負けないように、今日から、生徒と教職員とサポーターである保護者のみなさんとで『みんなの学校』『みんなの関西創価中学校』をつくる挑戦をあらためてはじめたいと思います。
◆生徒たちの声から学ぶこと
この授業の後、生徒たちだけでなく、先生たちからも「この授業の振り返りをしませんか?」「コーヒーを飲みながら、みんなで語りましょうよ!」「時間があるなら、話しましょ!」との声があがり、自分の言葉で語らずにはいられない空気が流れています。いつかサポーターである保護者のみなさんとも「自分の学校を自分がつくる」ということについて、語りあう機会をもてたらと思います。
最後に、生徒たちの声を紹介します。