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ハチドリのひとしずく#12_いざ、「勇者の旅」へ!

関西創価中学校教頭の上原桂です。
みなさんは、不安を感じたときにどのように対処していますか?

今年度から、本校では1年生を対象に、千葉大学の不安対処プログラム「勇者の旅」を導入しました。このプログラムは、認知行動療法を基に、不安に対処する方法を学び、実際に行動することで対処力を身につけるものです。東京・創価中学校でも導入されており、その効果を聞いて、本校でも採用することになりました。

今年の夏休み、クラブの大会で参加できなかった数名の教員をのぞいて、すべての教員がこのプログラムの「指導者養成ワークショップ」を受講しました。指導者養成ワークショップでは、実際に生徒たちが受ける授業の流れにしたがって、授業をするスキルを身につけるためのものです。

ですが、この指導者養成ワークショップを通して、教員自身が自分の不安度がどのくらいなのかを知ったり、不安を感じたときに、自分がどのように対処しているのかを振り返ったり、これから不安を感じたときに、どのように対処したらいいのかを学ぶとてもよい機会にもなりました。

教員の不安度は「3」から「88」まで様々で、わたしは「11」でした。(最大は「114」となるチェックテストです)10代の頃のわたしは、もっと不安度は高かったと思いますが、年齢とともにタフになり、ワクワクしながら生きることができるようになりました。

不安度の高さや低さは、それぞれの個性であり、不安度の高さは「より慎重に行動できる」という強みになりますし、不安度の低さは、「新しいことにチャレンジするハードルが低い」という強みになります。

同僚の数値をきいてみると「たしかに、そんな感じ!」という場合もあれば、「そんなに不安だったの?」という場合もありました。日ごろ、見ていた同僚の姿とは違う一面に触れて、それぞれの個性をいかした役割分担ができれば、さらにチーム力がアップするかもと思ったほどです。

このように「勇者の旅」プログラムを通して、不安に対処するスキルを学ぶことはもちろんですが、大切なことは「みんな違って当たり前」ということを知ることだと感じています。例えば何かを始めるときに、同じ現実を前にしても、不安度の低い人は「とりあえずやってみようよ」とワクワクしているかもしれませんし、不安度が高い人は「どうしてこの程度の準備で、スタートするんだろう」と思っているかもしれません。

同じ空間に、そういう”自分と違う”思い、”自分と違う”ワクワク感、”自分と違う”ドキドキ感、”自分と違う”ハラハラ感を持っている人がいる人がいることを知り、”自分と違う”を尊重しあえる学校風土が育めるといいなと思います。

「勇者の旅」ワークブック

今朝、ある教員がこんな話をしてくれました。
この時期、一年間で一番盛り上がる「競技大会」が目前にせまっています。そのような中、当然、運動が好きな生徒と、そうではない生徒との間には温度差もあります。盛り上がっている生徒たちは、当然「よかれと思って」みんなに「団結しよう!」「頑張ろう!」「優勝しよう!」と呼びかけます。

そんなとき、ある生徒が「自分は競技大会で勝っても負けても、人生にそんなに影響がないと思ってしまうから、みんなのようには頑張れない」と伝えたというのです。「競技大会は優勝を目指して頑張るのが当たり前!」と思っていた生徒たちにとっては「何を言いいだすんだ?!」という思いにもなったと思います。

そのときに、「どうしてそう思ったの?」と対話を始めるスキルは生徒たちにはまだなかったようで、教員が「〇〇さんは、そう思ってるんやね」と、その発言をした生徒と周りの生徒たちに、声かけをしたようです。

この話をきいて、まずは「自分はこう思っている」と安心して言える空気がそこにあったことが、大きな一歩だと感じます。今後、生徒たちが、互いの「違い」を尊重し、「どうしてそう思ったの?」の言葉から「対話」がはじまる学校になるための、大きな大きなはじめの一歩です。

「勇者の旅」プログラムを通して、不安とむきあい、みずから一歩を踏み出せる「勇者」たちが、学校を駆け回るまで、まだまだ時間はかかるでしょう。ですが、今、目の前にいる生徒たちが、将来、予測困難な時代をワクワクしながら生き抜ける「勇者」となることを信じて、待てる大人でありたいと思います。

「よいことはカタツムリの速度ですすむ」

マハトマ・ガンジー