ハチドリのひとしずく#18_「世界が、ぼくらにおいついた?!」〜OECD Learning Compass2030と校訓〜
こんにちは
関西創価中学校教頭の上原桂です。
気持ちのいい季節になりましたね。
今日は、OECD(経済協力開発機構)が2019年に公表した「OECD Learning Compass2030」について、生徒の頼もしい言葉を聞いたので、そのことについて書きたいと思います。
「ラーニングコンパス(Learning Compass)」の「コンパス」とは、羅針盤。子どもたちが大人の決まりきった指導や指示をそのまま受け入れるのではなく、未知なる環境の中を自力で歩みを進め、責任をもって進むべき方向を自分で見出すことの大切さを強調するために採用された言葉です。
「OECD Learning Compass2030」では、教育の最上位目標を「個人および社会の2030年におけるウェルビーイング」とし、「より良い未来の創造に向けた変革を起こすために必要となる力(コンピテンシー)」として次の3つの力を重視しています。(最近よく耳にする「ウェルビーイング(Well-being)」という言葉については、またあらためて書きます。)
昨年も今年も、最初の授業の日に「OECD Learning Compass2030」について話し、この3つの力を紹介しました。そして「この言葉って、どこかで聞いたことない?」と生徒に質問をしたところ、生徒たちからは「校訓やん!」という言葉が返ってきました。
「校訓ができたんいつ?」「2019年より前やんな?」「えっ、すごない?」「世界より先にもう目指してたってこと?」と盛り上がる生徒たち。「やっと、世界がぼくらにおいついたってことやん!」と得意げに言って笑いを誘っている子もいたほどです。
今年度、本校では、チーム担任制の導入や、英語や数学の選択制授業の導入など新たな取り組みをスタートしました。その新たな取り組みの根底にあるのは、予測困難な未来にあって、進むべき方向を自分で見出し、どんな境遇にあっても幸せになれる人間に育ってほしいという願いがあってのことです。
「教育」の成果は一朝一夕にでるものではありません。その人がどんな教育を受け、どんな力が身についたのか。その人が受けた教育が、その人の人生にどんな影響をもたらしたのか。そんな教育の真価は、50代、60代……もしかしたら「どんな風に一生を終えたのか」によってしか答えがでないものなのかもしれません。
教育は長期的な視点でしか結果が見えないものであるにもかかわらず、メディアやネットの世界では、目先の現象だけをみて、無責任に教育について語る「批評家」「評論家」が山ほどいます。でも「批評家」「評論家」が、子どもたちの幸せについて、責任をとってくれる訳ではありません。
ですから、現場の教員は「実践者としての覚悟」をもって教育にあたるしかありません。そして、「正解のない問いを問い続ける」覚悟をもって、自分たちは見届けることができないかもしれない生徒たちの未来の姿をイメージしながら「今」に全力をそそぐしかできません。一方で、目の前の生徒たちの未来の姿、彼らの中にある無限の可能性を信じられるからこそ、「今」に全力をそそぐことができるといえるかもしれません。
自分のことを「先生」と言うことにいつまでたっても慣れないのですが、最近は、生徒たちが生きる未来をイメージし、未来に必要な力とは何かを考え、まずは自身が学びを深め、失敗を恐れずに行動を始めるという意味で「先を生きる」大人でありたいと思うようになりました。
生徒たちが帰ったあとの職員室で、「今日の〇〇さんとのかかわり方、あれでよかったのかちょっと気になってて…」「今日は、こんな形ですすめたけど、次はこんな授業をやってみようと思うんですよね」「来年はこんなこともできるんじゃないかと思ってて」そんな風に、悩みながら、もがきながら、日々対話を重ねる同僚たちをみていると、「覚悟ある大人」が未来をつくるのだなと強く感じます。
まずは6年後の2030年をめざして、本校の新たな取り組みがスタートをした年に学んだ50期、51期、52期の生徒たちが、どんな姿で世界に飛び出していくのかを楽しみにしながら、可能性のかたまりである生徒たちと一緒に、1日1日を価値あるものにしていきたいと思います。
「こんなことをやってみたい!」と、主体的に動きはじめた生徒たちを見ていると、2030年が楽しみでなりません。