ハチドリのひとしずく#3_大河の一滴の誇り
こんにちは。
関西創価中学校教頭の上原桂です。
保護者の方からお電話をいただいたときに、「note読みました!」と言われ、とってもうれしくなりました。読んでいただきありがとうございます。
◆『草創期』って1期、2期だけをいうんじゃないんだ
わたしが働いている学校は、わたしにとって中学・高校時代を過ごした「母校」でもあります。開校年に入学した生徒から期数を1期生、2期生と数え、本年度の1年生は52期生となります。開校間もない若い期の先輩方のことを本校では『草創期』と呼んでいます。
在学していた頃、まさか自分たちが過ごした時代を『草創期』と呼ぶとは思ってもいませんでした。『草創期』というのは、せいぜい3期生までではないのか…と。
ところが、ここ数年「草創期の頃の話を聞かせてください」と生徒たちがやってくることが増えました。「えっ?わたしが?草創期の話?」と驚いていたのですが、52期生を迎えた今となっては、たしかにわたしがいた頃は『草創期』といえるのかもしれない、と思うようになりました。
開校50周年を迎えてから、「次の50年をどうスタートするか」「50年先、100年先、どんな学校を残したいのか」「50年先からみたら、きっと今も草創期だよね」そんな声が大人だけでなく、生徒たちからも聞こえてくるようになりました。
◆医師・吉岡秀人先生との出会い
さて、先日、ジャパンハートの創設者である吉岡秀人先生のお話を拝聴する機会がありました。ミャンマーやカンボジアで、30年にわたり無償で医療活動を続けている吉岡先生の生き方は、憧れであり、お話を聞いたり、本を読んだりするたびに、自分を奮い立たせてくれる、そんな存在です。そして「出会いによって自分の生き方が変わった」といえる存在でもあります。
そんな吉岡先生が、「30年たっても同じことで悩んでいるし、手術をやってもやっても亡くなっていく子どもたちを前に、自分には力がないんじゃないか、自分は世界から必要とされていないんじゃないか、と思うことがある」と話されていました。
何十年も無償で医療活動を続け、子どもたちの命を救おうとカンボジアに病院建設をも進める吉岡先生は、困難をものともしない超人のようなイメージで、そんな吉岡先生が口にされる言葉に驚きました。でも、超人に見える吉岡先生にも悩みや葛藤があって、それを乗り越えながら進んでおられるのだと知り、超人に見えるのは、特別な魔力が使えるからではなくて、絶え間なく、誠実に、やるべきことをやり続けているにすぎないののだ、と教えていただく思いでした。
◆大河の一滴の誇り
そして、そんな吉岡先生の次の言葉がとても心に残りました。「ぼくらは、小さなホコリのような、一つの分子でしかない」「でもその分子一つ一つが意味がないと言って、大きな川の流れから離れてしまったら、当然、その川の流れは細くなり、遅くなってしまう。近い将来、すべての子どもたちがガンから解放される日がもっと早く訪れたかもしれないのに、今、ぼくらが自分の存在なんて意味がないとあきらめてしまったら、その未来はどんどんと遠くなる。自分がそこに参加し続けることで、いつか天才が現われて、そんな未来を引き寄せてくれる日が訪れるかもしれない。ぼくもあなたもただの『大河の一滴』かもしれないけど、『大河の一滴の誇り』がある。そんな未来が必ず来ると信じてぼくは生きている」と。
このお話を聞きながら、わたしは全身に電流が走るような衝撃を受けました。そして、ぜひとも生徒たちにも伝えたいと思いました。生徒たちが過ごす、3年間、6年間は、これから先も続いていく学校の歴史からみたら、ほんの一瞬に過ぎないかもしれません。だけれども「自分には力がないから」「わたしなんかに意味がない」とあきらめてしまったら、伝統は生まれない。仮に、大河の一滴にすぎない存在だったとしても、自分が今いる場所で、小さな行動を続けることで、自分の未来も、周りの世界も、より豊かなものにできるんだよ、自分たちの何気ない毎日の中にしか未来はないんだよ、そう強く思いました。
3月、3年生を送る会である「飛翔会」の最後に、この吉岡先生の言葉を紹介しました。どれだけ伝わったかはわかりませんし、話しながら「生徒たちに」というよりも、自分自身に言い聞かせていたように思います。
◆子どもを支え、応援してくださる全ての方へ
今年度から、さまざまな学校のアップデートに取り組んでいます。スタートしたばかりの今は、失敗したり、課題に直面したり、迷うことも多くあります。でも「自分には大河の一滴の誇りがある」と心を決めると、勇気がわいてきます。「自分が、今ここで一歩をふみだすことが、きっと大きな未来に通じる」、そう思うと生徒たちと過ごす時間がとても愛おしいです。生徒たちにも、「大河の一滴の誇り」を忘れないでほしいし、生徒や教職員だけでなく、今、学校に関わってくださっている保護者や地域の方々、子どもたちを支え、応援してくださっているすべての方たちが、まぎれもなく未来の学校をつくるかけがえのない「大河の一滴」であることをお伝えしながら、未来につながる学校運営をすすめていきたいと思います。